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一つの瞬きに秘む。

茜色に空が染まり始めた夕刻。 立ち寄った無人駅舎の縦に細長い窓から見えた光景が、簡素にも関わらず劇的で心に残ったことから始まる。

その眺めが忘れられず、窓越しの撮影を試みるもピンと来ない。そこで、窓を隔てて撮るのを辞め、光景そのものをまず撮ることに切り替える。そして、縦横比に規則を設け、撮影後に比率外の部分を切ることにした。

とはいっても、撮影後に良い部分だけ拡大などでトリミングするのでは意味が無い。撮影当初から定めた比率を意識して撮れていることを絶対条件にする。縦に撮るならファインダーの上辺下辺、横に撮るなら左辺右辺が仕上がりの最端として撮影。ファインダーの中のグリッド線表示を頼りに、絶対に切れて欲しくない部分を線の中に収める。

採用した縦横比には、日本人に馴染み深い「白銀比」を採用。日本人が最も美しいと感じる白銀比である「大和比(1:√2。コピー用紙の比率)」だと細長くないため、もう一つの白銀比「第2貴金属比」の1:1+√2(約5:12)に定めた。

年々と撮影を重ねるたびに、最初は思いつきのような気軽さだったのが比率を意識して撮影する難しさが深まる。なんでもかんでも、この比率で切り撮れる訳ではないのだと実感して枚数は増えない。まだまだ「一つの瞬きに秘む。」は続く。